2026.3.8
青葉山の麓のログハウスから。美味しい時間を届ける、秋岡範子さん。
青葉山のふもと、高浜町中山区。山あいの道を少し登っていくと、一軒のログハウスが現れます。


ここが「ログペンション秋岡屋」。木のぬくもりに包まれた空間で、旬の食材を使った創作料理が楽しめる宿として、長く高浜町内外の人たちに親しまれてきました。

そんな秋岡屋で、いまランチタイムを支えているのが秋岡範子(のりこ)さんです。

範子さんがランチを担当するようになったのは1年ほど前。旬の食材や地元の食材を使った月替わりのプレートランチやスイーツを提供しながら、訪れる人がほっとくつろぎ、つい時間を忘れてしまうような空間を、この場所で大切に育てています。
家業を手伝う日々と、心の変化。
範子さんは京都で生まれ、高浜町で育ちました。高校卒業後、通信課程で専門学校に通いながら美容師の国家資格を取得し、美容院で働いていたといいます。

21歳で結婚。翌年、出産を機に美容院を辞め、実家の秋岡屋を手伝うようになりました。当時は自分でお店をやりたいという思いがあったわけではなく、あくまで家業の手伝いという感覚だったそうです。

1993年にオープンしたこの宿は、範子さんのお父さんが手作りした本格的なログハウス。ご両親が長年レストランと宿を営み、町内外から多くの人が訪れる場所でした。

子育てをしながら実家の仕事を手伝う日々。その中で範子さんは一度、秋岡屋を離れることを決めます。

「家族とはいえ、ずっと一緒に働いているとぶつかることもありますし、長く同じ場所にいたので、一度環境を変えてみようと思ったんです。チャレンジしてみたい気持ちもずっとあって、自分に何ができるのかなって」

そうして範子さんは秋岡屋を離れ、高浜町社会福祉協議会で働くことになります。その間にコロナ禍やお店を取り巻く環境の変化も重なり、秋岡屋のレストランはしばらく休業することになりました。
離れて気づいた、ログハウスの魅力と「美味しい」の喜び。
新しい挑戦を始めた範子さんでしたが、それまで接客業が中心だったため、事務仕事は決して得意な分野ではありませんでした。

初めての事務作業に苦労する中、社会福祉協議会で週に一度、お弁当づくりの手伝いに行く機会があり、料理をする時間やお年寄りと話す時間がほっとできるひとときだったといいます。

その後、建設現場にあるプレハブ事務所へ転職。ここでも事務仕事に悪戦苦闘していたといいます。そんな中、事務所の所長さんから建設現場で働く人たちの昼食用にお米を炊いてほしいと頼まれました。

イメージ写真
「そのうち所長さんから、週に一度カレーを作ってほしいって頼まれるようになって。チョコレートやコーヒーを入れてみたり、みんなで試行錯誤しながら作るのも楽しくて!同じものを食べて『美味しいね』って言い合えるのが、すごく嬉しかったんです」

「自分が作ったものを『美味しい』って言って食べてもらえる。それを体験して、ああ、私にはやっぱり “これ” が大事なんだなって気がついたんです。それと、いろんなお宅にお邪魔する中で、ふと『うち(秋岡屋)みたいな家はないぞ…』って思って」

薪ストーブが二つあるログハウス。青葉山のふもとという環境。当たり前だと思っていた実家の場所が、実はとても特別な空間だったこと。
そして、誰かのために料理をつくり「美味しい」と言ってもらえることが、自分にとって大きな喜びなのだということ。家を離れたことで、範子さんはあらためて気づいたのでした。

少しずつ、自分らしいお店へ。
そして範子さんは会社を辞め、秋岡屋を自分の手で続けていくことを決めました。しばらく静かだったログハウスに、再びにぎやかな時間が戻ってきました。

「両親は快く迎えてくれました。でもやるからには、両親のやり方をそのまま引き継ぐのではなく、自分ができることをやろうと思ったんです。母にはいつも怒られていますけど(笑)でも見守ってくれています」

両親からお店の経営についてのノウハウを学びながら、ランチについて最終的に決めるのは自分。そんなふうにすることで、親子の関係も以前より良くなったといいます。

「母は母の良さとセンスを持っているし、経験も豊富なので心強いです。お店としては儲けることも考えないといけないって分かっているんですけど…(笑)でも今は、私が美味しいと思うものを出して、自分が心地いいと思う時間を提供することに集中させてもらっています」


範子さんのランチメニューは、身体にやさしいご飯と素朴なデザート。今月は、秋岡屋×SHOGA STUDIOのコラボランチです。マクロビオティックに基づいた食のアドバイスや施術を行う、山崎慶子さんと一緒に考えたメニューです。

「季節の変化に合わせて食べものを取り入れると、からだは心地よく整っていくそうです。春はデトックスの季節なので、今月は溜め込んだものを外へ出すお手伝いをするランチにしました」

「まだ自信がなくて、大丈夫かな〜どうかな〜って毎月試行錯誤しながら作っています。それでも『美味しい!』って言ってもらえると頑張れます」と範子さんは笑います。

青葉山の麓、この場所を生かして。
最近では、地域の人たちとコラボしたワークショップも行われています。スワッグづくりや手作りみそづくりなどが企画され、少しずつ新しい楽しみ方も広がっています。
▼山崎慶子さんのみそ作りワークショップ

今後はアロマなど、範子さんの好きなものや、ここの空気に合うもの、お客さんが喜んでくれるものを、のんびり楽しめる場にしていけたらと考えているそう。

そして子育ても落ち着き、自分を見つめる時間も増えるなかで、登山にもハマったといいます。
「ずっと海が好きだと思っていたけど、私には 山だ!って気がついたんですよ(笑)やっぱりここに住んでいるからですかね?」

そんなふうに山の魅力を知るなかで、青葉山の麓にある秋岡屋という場所も、範子さんにとって少しずつ新しい意味を持ち始めました。

「できるかわからないですけど、青葉山に一緒に登って、降りてきてここでご飯を食べるツアーとかやってみたいです。このログハウスだからこそできる楽しみ方を考えて、いろんな人に喜んでもらいたいですね」

・・・
自分が美味しいと思うもの。自分が心地いいと思う時間。それをこの場所で形にしていく。
秋岡屋には再びあたたかな灯りがともり、範子さんのやさしいご飯とともに穏やかな時間が流れています。
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