2024.5.1
直径5mmの小さなプラスチックから始まった、大海原への大冒険。
はじめまして、永野由佳です。私は、舞鶴市や高浜町の若狭和田ビーチを中心に、ビーチコーミングや、アップサイクルなどを行う環境アーティストとして活動しています。今回、私の活動についての「これまで」そして「これから」をお話ししたいと思います。
海とは無縁の子育て時代
私には、中2の娘と、小5の息子がいます。以前は京都府舞鶴市で子育て支援の仕事をしており、今も舞鶴に住んでいます。下の子が10か月の時に子ども同伴で働き始め、子育て真っ最中のママとして当事者目線で地域の親子に寄り添って来ました。
同時期にママ仲間と「子ども用品交換会」をボランティアで運営し、子ども服やおもちゃなどの物々交換を通して乳幼児期の子育てをみんなで支え合ってきました。
▼2017年5月 青葉山ハーバルビレッジのイベントに出店
子どもの成長と共に出てきた違和感
家族にも、職場にも、仲間にも恵まれ、幸せな毎日を過ごしていた私。下の子が幼稚園に入り、自分の時間が増え、活動の選択肢が広がったときに言葉にできないモヤモヤがどんどん広がっていくのを感じました。でも感じないふりをして、誰にも言いませんでした。だって私はママだから。どんなときも笑顔で、家族のために頑張るのが当たり前。…数々の思い込みに縛られていた私は、ついに心が壊れてしまいました。
そして導かれた、若狭和田ビーチ
何をしても楽しくないし、誰にも会いたくないし、何を食べても味がしない。「何もかも捨ててゼロになりたい」。そんなどん底の時に、なぜか私は車を若狭和田ビーチに走らせていました。そこで海を見た時に、あまりの美しさに感動し、生きる希望が湧いてきたのです。「ここで何かやってみたい!」と。
その時に思い出したのが、ハーバルビレッジのイベントで行われていた貝殻でフォトフレームを作るワークショップでした。「ビーチクラフト」にピン!ときた私は、ワークショップを行っていた団体『ブルーフラッグアカデミー』に連絡をとることにしました。
「海辺のまちの新たな可能性をめざして」というコンセプトのもと、ブルーフラッグの知名度の向上や地域への理解を深めていくために活動されていたのがブルーフラッグアカデミーです。
思い切って、海の世界へ!
すっかり海の世界に心がときめいてしまった私は仕事を辞めて、2018年4月から高浜の海で、これからの人生を模索することにしました。ビーチコーミングをしたり、ブルーフラッグアカデミーとしてイベントを手伝ったりしていました。もちろん不安もありましたが、ワクワクの方が大きかったです。
▼2018年 ぷらっとHome高浜「春のいろどりマーケット」
海を愛する人たちとのビーチクリーン
ビーチコーミングをするようになってから、たくさんの気づきもありました。それは、どこの浜にも必ずプラスチックごみが打ち上げられているということです。気になるので貝殻を拾うついでにごみも拾っていましたが、あまりの多さに無力感を感じていました。
和田地区では「人足(にんそく)」と呼ばれる浜掃除が年に数回行われていて、住民の方々が美しい砂浜を守っていらっしゃいますが、冬場は特に日本海の荒波に運ばれて沢山の海ごみが漂着します。
「なんとかしたい」と思っているのは、私だけではありませんでした。若狭和田ビーチで、SUP体験やヨガを提供されている方々が、誰でも気軽に参加できる毎月1回のビーチクリーンを始められたのも2018年。私も子どもたちと参加し、みんなでやる楽しさと達成感を味わっていました。
ビーチクリーンを続けて何年か経ったある日、ふと「このごみはこの後どうなっているんだろう?」 と疑問に思いました。そして調べたところ、最終的には他府県の山に埋め立てられていることがわかったのです。海がキレイになっても、山を汚しているのなら意味がない。ショックを受けた私は、作品の素材がその頃から海洋プラスチックに変わっていきました。
価値観を変えた「アップサイクル」という考え方
「アップサイクル」とは、本来は捨てられるはずのものにアイデアや工夫を凝らして新たな価値を生み出すことで、創造的再利用とも言われています。
私は海ごみをアップサイクルして、最終処分場に埋め立てられるごみを減らしたい。ごみを生まない選択肢を選ぶ人を増やし、キレイな砂浜や地球環境を残したい。そんな思いから、そのきっかけになる作品を作ったり、体験を提供する活動をしてきました。
▼海洋プラスチックをアップサイクルした作品例
この考え方は、子ども用品交換会の経験からもつながっています。子どもの成長は早いので、お気に入りの服も翌年にはサイズが合わない。もったいないから、いま丁度良く着てくれるおうちに譲ろう。そして我が子にも、いま必要なものを譲ってもらおう。お互いさまの精神、ものを大切にすること、お金を介さなくても豊かさは循環できることを学びました。
▼娘の出産祝いにいただいた肌着を息子に着回し、そしてブローチに
生地がヨレヨレなのでよそさまにおさがりするのも気が引ける。でも可愛いし捨てるのがもったいない…そんな生地を組み合わせて作ったブローチ。今思えば、それが私のアップサイクルのはじまりだったかもしれません。
点と点が線になって、交わって+(プラス)になる
若狭和田ビーチと、そこに関わる皆さんとの出会いによって、生きる希望を取り戻した私。イベントに出店したり、作品を委託販売したり、公民館での講座や展示会を開いたこともありました。
特にマイクロプラスチックを取り扱うようになってからは学校への海ごみ関連の授業に声をかけていただいたり、修学旅行生やワ―ケーションツアーのビーチコーミングやクラフト体験を担当したりと、7年の間に少しずつできることが増えていきました。
毎年、海水浴シーズンに開催している「BLUE FLAG 環境教育」では、観光協会から依頼を受けて、若狭和田ビーチでワークショップも開催しています。
「泳ぐ」以外の海での楽しみ方があること。また、海ごみを使ったワークショップを通じて、ごみはまちからも流れ着いていることを知ってもらい、普段の生活で少しでも環境に配慮した選択ができる人が増えることを願って、あえてキレイなだけじゃない海の現状も伝えています。
この春「ブルーフラッグアカデミー+」がオープン
そして2024年3月。ブルーフラッグアカデミーの運営を引き継ぎ「ブルーフラッグアカデミー+」としてリニューアルオープンすることが決まりました。
今までのBLUE FLAGの発信拠点、コワーキングスペースとしての機能に加え、アップサイクルを日常的に体験していただけます。ものづくりを通じて色んな人が交流したり、夏以外にも海に親しんだり、楽しみながら環境問題を解決していけるような場所を目指します。
若狭和田ビーチから徒歩2分という立地を活かし、ビーチコーミングからのクラフト体験も可能です。
先日は親子三世代でビーチで拾った貝殻を入れたキャンドル作りを体験され、とても喜んでいただきました。
『子どもたちに安心して裸足で走り回れる砂浜を残したい』。そう思ってビーチクリーンに参加していますが、裸足で楽しそうに貝殻を拾っている姿を見て私も幸せな気持ちになりました。
プレオープン期間が終わり、5月15日から本格的にオープンします!どうぞお気軽にお立ち寄りください。
instagram:ブルーフラッグアカデミー+
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直径5mm以下の小さなプラスチックを「マイクロプラスチック」と呼びますが、この小さな海ごみが私を想像もしていなかったところに連れてきてくれました。
これからもビーチクリーンやアップサイクルを続けながら、次世代の育成にも力を入れていきたいと思っています。
instagram: カラニカイ(永野由佳)